本場ヨーロッパより直接買い付けした福岡のイギリスアンティーク家具専門店Perla
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猫脚アンティークの華麗なる足跡〜その歴史〜

しなやかな猫を思わせるその脚。曲線が美しい綺麗な形。
それは椅子だったり、バスタブだったり、チェストだったりと、ありとあらゆるアンティーク家具に見受けられる特徴的なものです。

そう、猫脚。猫脚です。
筆者は猫脚のデザインを大変に好ましく思い、気に入っています。とても好きです。
以前こちらの記事でご紹介したヴィクトリア様式のインテリアでも良く見られる猫脚には、過去の外国に対するロマンと憧れを感じずにはいられません。

しかしこのヴィクトリア女王の統治した時代では、“ヴィクトリアニズム”と呼ばれる価値観が、“猫脚(家具の脚)を隠さなければならない”という決まり事を作ってしまったこともあったのです。

「折角の綺麗な脚を!もったいない!」

何も知らない方が聞いたら奇怪な者を見る冷めた視線を送られてしまうでしょうが、ヴィクトリアニズムの行いだけを聞いた筆者の最初の考えはこれでした。
家具職人の方が丹精込めてS字に加工し、繊細な装飾を施した言わば芸術品を、隠さなければならない恥ずべきものとする論調。

猫脚でなくとも、“脚”と名の付くものは全て隠したり、遠ざけたりしたというのですから、その徹底振りには唖然とさせられます。
しかしもう少し詳しく見ていくと、どうやらヴィクトリアニズムの一見理不尽とも思える決まりごとには理由があるようで……?

今回は、一概に『ただの家具の脚』と放っておくには惜しい歴史が詰まっている、この猫脚について迫ってみたいと思います。

アンティーク家具の定番“猫脚”の歴史

猫脚といえばあの曲線を描いたデザインが真っ先に思い浮かびますが、実はこの曲線だけでは“猫脚”とは呼べないのです。
例えば鳥の爪先をモチーフにした脚だったり、山羊の蹄をモチーフにした脚だったりと、猫以外の動物の脚をデザインに用いたアンティーク家具も沢山存在します。

こういったものは“カブリオールレッグ”と総称され、猫脚とはその中でも特にポピュラーとされているデザインなのです。
カブリオール(カプリオール)はバレエの専門用語では“山羊のジャンプ”という意味の、難しい跳び方のようですね。

ダンサーの方はこの動きをしっかりと計算して行う必要があるそうです。
そんな難易度である分、綺麗に決まった時の美しさは文句なしに見栄えするものなのでしょう。

また、カブリオールの語源はイタリア語のカブリオーラ(雌鹿の跳躍)が由来であるといわれ、17世紀ごろのフランス家具には既にこの原型が存在したとされています。
さて、ここから正式にカブリオールレッグが広まったのは、ロココの美術様式が確立された18世紀。

フランスからイギリス等各国へと流行の波が押し寄せ、数多くの気品溢れるアンティークが生み出されるに至りました。
現代ではカブリオールレッグ=猫脚という式が成り立って、曲線を描いたアンティーク家具の脚なら大体“猫脚”と呼んでしまったほうが通じる、というのが一般的な印象です。

アンティーク家具 猫脚

ヴィクトリアニズムでは猫脚=いやらしい!?

そこで冒頭でご紹介した“ヴィクトリアニズム”が登場します。
ヴィクトリア女王が統治していた時代の中流階級の人々は、とても清潔で、潔白であることを理想としていました。
こちらキリスト教プロテスタントの大きなグループ“ピューリタン”が元々の火付け役だったとされ、このピューリタンの考え方をより厳格にしたものがヴィクトリアニズムです。

勤勉であること、堅実であることが良いこととされていて、露骨な欲望の発散は御法度。
こうして見ると現代日本とそう変わりない道徳的な考え方だな、とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、何事も行き過ぎれば常軌を逸したものと見なされるのが世の常です。

「脚(leg)という言葉を使用するのは下品!」
言葉にするのもはばかられました。

「家具の脚も下品!カバーで隠してしまいなさい!」
新たに作られる家具の脚も目立たないようにされてしまいます。

「折角の綺麗な脚を!もったいない!」
……冒頭での筆者の心の叫びが、当時のイギリス中流階級あたりの方々に聞かれてしまったなら、一体どんなことになっているのやら。恐ろしいお話です。

フランスアンティーク家具の脚

麗しきかな、ヴィクトリアニズム?

しかし規律の厳しすぎたヴィクトリアニズムが長続きすることはありませんでした。
あまりに無理な決まりごとを万人が守り続けるのは無理があったのです。

確かに貞淑たらんとする意識は大変に立派なものであり、現代にも通ずる道徳的な、大人だからこそ忘れがちな考え方です。
ですが、その考え方を他人に押し付けるようになってしまっては折角の良い考え方もくすんでしまいます。

ヴィクトリアニズムも最初は素敵な考え方だったのが、時を経るにつれてどんどん歪になっていった経緯があるようです。
こうして、先人の考え方により存続の危機にあった猫脚ですが、今日ではアンティーク家具の代表格として広く名が知られています。

再び家具の脚がタブー視されることは今後ないと思いたいですが、人間の歩む未来は誰にも分からないものです。もしかしたら……?
アンティーク家具の代名詞が潰えることがないよう、筆者は祈っております。