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なぜ英国人は重厚な家具を好んだのか

英国アンティーク家具を見ていると、
ある特徴に気付きます。

とにかく重厚。

暗い木。
分厚い天板。
重い扉。
大きな装飾。

現代の感覚だと、
少し“重たすぎる”くらいの家具も多い。

でも、
19世紀頃のイギリスでは、
こういう家具こそが
「豊かさ」や「格式」
だったんですね。


曇り空の国だった


まず、
イギリスという国そのものが、
かなり独特です。

曇りが多く、
湿度が高い。

石造建築が多く、
室内もどこか薄暗い。

しかも19世紀頃までは、
照明の中心はガス灯でした。

今みたいに、
部屋全体を明るく照らすことができない。

だから当時の室内って、
かなり陰影が強かったんですね。

そんな空間の中では、
明るく軽い家具より、

  • 深い木の色
  • 重い布
  • 真鍮

みたいな素材の方が、
空間に馴染みやすかった。


「家そのもの」が財産だった時代


19世紀のイギリスでは、
産業革命によって、
巨大な富を持つ階級が生まれていきます。

鉄道。
石炭。
貿易。
金融。

世界中から莫大な富が集まり、
ロンドンは“世界の中心”みたいな都市になっていった。

その頃の上流階級にとって、
家は単なる住居ではありませんでした。

“自分の成功を見せる場所”
でもあったんですね。

だから:

  • 大きなダイニング
  • 重厚な本棚
  • 彫刻入り家具
  • 銀器
  • 厚いカーテン

みたいな、
「重さ」や「密度」
そのものが価値になっていく。

今の高級ホテルに少し近い感覚かもしれません。


書斎文化と「知性の演出」


特に象徴的なのが、
英国の書斎文化です。

19世紀頃のイギリスでは、
「本を持つこと」そのものが、
教養や階級の象徴でもありました。

重い本棚。
革張りチェア。
オークの机。

こういう家具って、
単なる道具というより、

“知性の演出”

でもあったんですね。

ちょうどこの頃、
シャーロック・ホームズのような探偵小説が流行し、
ロンドンでは
「知的であること」
そのものが一種の憧れになっていきます。

だから英国家具には、
どこか
“考えるための空気”
みたいなものが残っている。


今の感覚とは、

「豊かさ」の形が違った

現代だと、
豊かさって:

  • 明るい
  • 軽い
  • ミニマル
  • 開放的

みたいな方向に向かうことが多い。

でも19世紀のイギリスでは、
むしろ逆でした。

重い家具。
暗い木。
厚い布。

そういう
“密度”
そのものが、
安心感や豊かさだった。

だから今、
英国アンティーク家具を見ると、
単に古いというより、

「豊かさの価値観そのものが違う時代」

を感じるのかもしれません。


そして面白いのは、
こうした英国の“重厚さ”に対して、
20世紀に入ると、
まったく逆方向の家具が人気になっていくことです。

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